メールマガジンで紹介した
「カロリーを控えたカップケーキ作り」プロジェクト裏話
 先月お願いを行いました、岡山県立早島養護学校との連携事業「カロリーを押さえたカップケーキ作りプロジェクト」について報告します。このプロジェクトは、早島養護学校の病棟(医療を必要とする生徒が隣接する南岡山病院)から通ってくるクラスがあります。高等部の病弱部には7名の生徒がおり、その生徒達との交流を行いました。この病弱部には、体質的な問題もあり糖尿病などの病気のため食事制限をしなければならない生徒もいます。おやつなどを最も食べたい年頃でありながら、病気のために心の葛藤を繰り返しながら我慢を強いられており、そのことが大変なストレスとなっている生徒が多くいます。早島養護学校では、10月12日(土)に開かれた文化祭で自分たちが地元の早島公民館などに出かけて色々な図書から情報を得て、カロリーを押さえたカップケーキ作りに挑戦しました。結局、2個、90kcalのケーキを作ることに成功し、2個を1つの袋に入れて50円で販売しました。今回、高松農業高校では、生物工学科がクッキーやカステラ、パン、味噌、ジャム、ワインなど微生物を使った製品作りを行っている関係もあり、早島養護学校の作ったカップケーキを専門的な立場からカロリーがそのままで、もっと食感がよく、おいしいカップケーキを一緒に作ろうということになり早島養護学校高等部の通級クラスと高松農業高校生物工学科3年生女子4名との交流が実現しました。

 2校は、10kmほど離れており、直接行き来をして交流をすることは無理が生じるため、今回は岡山情報ハイウェイを活用したテレビ会議システムで3回の交流を行い、最後の1回を早島養護学校の生徒が高松農業高校を訪問して一緒に工夫したカップケーキを作ることにした。
 第1回目の交流は、10月29日に第1回目のテレビ会議システムを活用した授業を行いました。後に述べますが、11月15日(金)〜17日(日)の間、コンベックス岡山で開催されました「全国マルチメディア祭」2002inおかやま」の中で、県が運営する中展示場学びのシーンという場所で、両校と会場「学びのシーン」の3地点を結び、テレビ会議システムを活用した鈴木敏恵先生プロデュースによる未来型授業を第3回目の交流として行う予定にしていました。そのための接続状況のチェックなどNTT西日本岡山支店の全面的な協力の下で行いました。第1回目は、高農の製パン室と早島養護学校理科室、そして、テレポート岡山の3地点で11月15日の形態を念頭に行いました。しかし、高農は1.5Mbpsの回線であるものの、早島養護学校は128Kbpsの回線のため、音声や画像が固まったり、一部の音声が届かないという、いわゆるパケット落ちが激しく、交流自体が困難を極めました。繰り返し説明したり、ゆっくりと話したり、時には、携帯電話を活用したりしながら進めていきました。内容は、自己紹介に始まり、学校紹介、両校の文化祭の紹介、最後に、今回作ったカップケーキをどのような方法で作ったのか、苦労した点や、今後の反省点にまで話が及びました。そして、今回の交流の最終ゴールを「社会の同じ悩みを持つ人のために役立つカップケーキ作り」とし、カップケーキについてレシピなどをHPにあげることにしました。また、交流に活用したり、広く感想を聞くための掲示板も作ることにしました。早島版のカップケーキのレシピHPについては、コンピュータに興味を持っている3年生男子が作ってくれることになりました。高農側では、提供されたレシピを元にカップケーキを作り、カロリーや触感、おいしさなどを考えて改良版カップケーキを次回の交流(11月8日)までに作ることにしました。当初は、20分間を予定していた交流ですが、前述のような回線の問題から結局1時間かかってしまいました。

 第2回目の交流まで、NTTは、色々な方法で少しでも安定した回線状態を確保するために何度も実験を繰り返してくれました。ISDN回線なら、128Kbpsでも動きは不自然なものの音声のとぎれなどはないのですが、IT回線を使っているだけに色々な要因で不安定になってしまいます。しかし、夜遅くまで何度か実験を行い2回目の交流間際には、なんとか、安定した音声や画像が届くところまで持っていくことができました。いよいよ、2回目の交流の8日が来ました。時間は、14時スタートでした。始まりの数分間は、実験と同様、かなり安定したやりとりができましたが、その後、第1回目と同様な状態になってしまいました。時間帯により、ITの利用者が増加したのが一番の原因だと思われます。授業は第2回目も時間をかけながら、改良カップケーキ作りの報告などを行いました。カップケーキの最も大きな改良点は、早島版のものは、モデルをシフォンケーキにしていたため、サラダオイルを使っていました。しかし、実際には、バターやマーガリンのほうがカロリーが低いことが判明しました。そして、サラダオイルを使うよりバターなどを使うことにより風味や味が良くなりました。結局、マーガリンを使ったものは2個で約62kcal、バターを使ったものは2個で約74kcalでした。従って、元が2個で90kcalですので、1個余分に食べられることもわかりました。

 第3回目の交流は、鈴木敏恵先生をお迎えして11月15日11時20分より全国マルチメディア祭2002inおかやまの中で行われました。第3回目は、多くの方が見守る中で行われるということで、回線状態が以前の交流のようだと交流自体ができないことになってしまいます。このため、NTTスタッフも必死で色々と実験を行ってくださり当日を迎えました。結論から言うと、別の回線を確保することで、通信状態は完璧な状態に持っていってくださいました。感謝 感謝。
 第3回目が始まるまでに、皆さんから多くの掲示板への書込をしていただくことができました。遠くは、沖縄県の東大東島、東は、千葉県など本当にITのすごさを再認識する瞬間でした。
 第3回目は、鈴木先生の司会で始まり、両校のカップケーキ作りの苦労したことは工夫したことなどについて鈴木先生の問いかけに生徒が答えるという形式でスタートしました。そして、早島版のカップケーキと改良版のカップケーキを高農で作り、早島の生徒、会場の参加者に試食してもらい感想を参加者の机に設置されているPCから掲示板に入力してもらいました。また、その際に使用した卵については、高農の畜産科学科小家畜専攻生が登場し、自分たちが自然に放ち飼いし、自分たちが無農薬で作り上げた飼料で育てた卵を使ったことなどの話を行いました。また、会場と早島では高農から提供された新鮮な卵や新しい卵を実際に割ったりして卵の新鮮さの見分け方などについての実験も行いました。会場に訪れた方は、直接その場にいなくてもテレビ会議システムを活用することによって、何カ所かを結び、同じような授業を受けることができることを体験され驚きの様子でした。最も驚いたのは、もちろん、安全で低カロリーの高校生が共同で開発したカップケーキでしたが。会場の主婦からは、お湯に浮かせてみるなど別の方法での新鮮さの見分け方についてご自分が実際に行っている方法の紹介もありました。

 第4回目の交流は、12月11日に行われました。今回は、早島の生徒が高農を訪問しての交流でした。今まで、メールマガジンでテレビ会議システムは、離れた地点を結び授業を行う上での大きな武器ではあるものの、あくまでもバーチャルな体験に終わってしまう可能性があるということを度々書いてきました。今回も、早島の生徒が高農を訪問し、一緒にカップケーキを作り食べるというリアルな体験があってこそ、1連の交流学習が完成するものと思っています。10時から始まった交流は、12時半頃までかかりました。直接顔を合わせたことはなくても、いつも画面を通して顔を合わせているので、すぐうち解けて話ができ、カップケーキ作りが始まりました。高農改訂版のカップケーキのココア味や抹茶味、ジャムを少々入れたもの、そして、オレンジピールを入れたものなど4種類を作りました。

 今回の交流を通して、最も大きな成果は、早島養護学校の生徒にとって、病院と学校という従来の生活空間から飛び出し、同じ年代の生徒と一緒になって一つのプロジェクトを行ったということがあげられると思います。最後に、掲示板を設けたHPを作り、多くの人からとても大きな反響があったことです。掲示板や直接いただいたメールで、本当に、病気で困っておられる方が多いこともわかりました。健康なものにはわからない切実な悩みがあるということです。そういう方は、アンテナを高くして、少しでも病気が改善したり、安全な食について色々と情報を得ようとされています。今回のプロジェクトが当初の目的のように、このような方の少しでもお役に立てるものであったことを心より喜んでいます


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