鈴木敏恵先生をお招きして、テレビ会議システムを活用した「命の大切さ」をテーマとした交流授業を行っていた、そのとき、出産まで、後2ヶ月と迫った通称「マダワスカ」が体調を崩してしまいました。

マダワスカの亡骸
加茂小学校交流掲示板より
7・1の朝、いつもと同じように牛舎へ来るといつもとは違う空気に声も出なかった。目の前には毛布をかけられ顔には袋みたいなものをかぶせられた9号牛通称マダワスカが横たわっていました。そして、それを見つめる生徒と先生がいた。マダワスカは乾乳中乳房炎という(オッパイ)の病気になり調子を崩していました。エサを食べなくなり、熱が出て、起き上がれないくらいの重症でした。『乾乳』というのは分娩する2ヶ月前から分娩するまでの2ヶ月間お乳を搾らない期間のことです。これは、産まれてくる仔牛のためにミルクを残しておくためにします。
しばらくは先生たちで対応していましたが、獣医さんを呼ぶことになりました。みんなとテレビ会議をした日(6・28)の午前に獣医さんが来て点滴をしてもらいましたが、その時の獣医さんの顔はあまりいいものではありませんでした。ずっとすぐ治るって思っていた私はその時、本当に治るの?とすごく不安になりました。それから、土曜、日曜あって月曜日に死んでしまいました。土、日来た生徒は獣医さんが来て点滴をしたにもかかわらずどんどんマダワスカの状態は悪くなったと話していました。月曜日の深夜2:00ごろ寮生が様子を見に来るとかろうじて息はしていたそうですが、むしの息だったそうです。
マダワスカは死んだ原因を調べるために解剖されました。先生1人とマダワスカの担当者生徒2人は解剖に立ち会いました。いくら病気の原因を知るための解剖とはいえ、自分がさっきまでかわいがっていた牛を切り刻むのはそう簡単にできるものではありません。それなりの覚悟と勇気がいるはずです。解剖している約4時間2人の担当者は立ちっぱなしで頑張ったそうです。私は、マダワスカの死だけでもそうとう辛いのに「よくここまで頑張った」ってほめてあげたいです。私だったら担当牛にそこまでしてあげられるのかなと思ってしまいました。はじめてここで、身近な動物牛の『死』を体験しました。それはすごくつらいくて悲しいものでした。でもこのことを体験することによって得たものはたくさんあると思います。それを踏み台にしてまた次のステップアップにつなげていければないいなと思います。担当者の2人も今はショックが大きくまだ立ち直るには時間がかかると思います。早くいつもの元気な姿に戻ってくれることを祈っています。最後に・・・これからマダワスカのような牛を出してはいけない。そしてマダワスカという一頭の牛の死を無駄にしないように・・・。もう二度と第二のマダワスカを出さないために私たちができることを頑張っていきたい。

この「マダワスカ」の死について、担当の生徒から7月4日の加茂小学校との交流授業で報告をしました。掲示板には、次のような高農の生徒の文章が書かれていました。
(A子さんとB君はマダワスカの飼育を中心になってしている畜産科学科2年生と3年生です。)

A子さんの話はどうでしたか?何か感じてもらえたでしょうか?マダワスカに対するA子さんの気持ちが少しでも分かってもらえたらうれしいです。その気持ちが強かったからこそ助けてやりたかったという思いがまた話をしている時によみがえってきて涙が出てきたのだと思います。私が言葉で書くより、今日のテレビ会議で実際に中根さんの話を聞く方がみんなにも書いた言葉にはない思いや気持ちが伝わったのではないかと思います。

「マダワスカ」の死後、死因を特定するために、解剖が行われました。体を、いくつかの部位に分けて切断しました。死因は、乳房炎が原因であったことが獣医から学校へ伝えられました。高農の授業でも、「マダワスカ」の死が取り上げられ、いくつかの写真とともに学習を行いました。

M子さんの感想  子宮を見て、とてもショックだった。先生がはじめに言っていたけれど、自分の予想よりも大きく膨らんでいたし、仔牛を見たら毛もちゃんと生えていた。早めに発見されていたら、もしかしたら助かっていたのかもわからないと思ったけれど、95%は助からないらしいし、母親よりも先に仔牛は死んでしまったのではないかと先生は言っていた。すごくかわいそうだった。母親が仔牛より先に死んでいたら、仔牛はきっと苦しかったんだろうなあ、呼吸はできないし、栄養もこなくて苦しかっただろうな。人間の子どもは、はじめて聞く音は、母親の血液の流れや、心臓の音らしい。牛もたぶん一緒だと思う。仔牛は寂しかったんだろうなあ?生き物が死んでしまうと悲しいし、辛いな。
N子さんの感想  死んだ後まで、バラバラにされ、解剖されるのが痛々しかった。いくら原因を知るためとはいえ、あそこまでしてよいものかどうか、疑問に思う。昨日、ちょうど、動物実験にあう生き物たちの本を読んでいたので、なんだかいつもより深く考えてしまう。人間たちの勝手な都合で切り刻まれる動物たち。何だかなあ。と感じ、そのまま安らかに眠らせてあげてもいい。と思うが、解剖することで、他の牛も同じ結末にならないよう、対策が打てるかもしれないというのも一理あると思う。世の中、いろいろ難しいものかもしれない。
牛の解剖、スライドでしたが見ることができてよかったかもしれない。他の動物たちもきっとこんな風にバラバラに解体され、燃やされるだけなんだなあと思いつつ、せめて知った自分たちだけでも、天国に逝けるよう、祈ろうと思う。自分たちの犠牲になって、生きていた牛。死んだときくらい、感謝しよう。少しは浮かばれてくれるかな?自己満足の世界ですが、おつかれさま。
O子さんの感想  大切にされてた牛が死んでしまったことは残念だったけれど、「マダワスカ」の解剖スライドは大変よい勉強になった。
 今学期の畜産で学習した牛の体のことで、第1胃200リットルがどれくらいの大きさをしているのかや、実際の牛の子宮がどんなものか、このスライドで見て何となくわかってきたと思います。
 子宮の中にいた仔牛が「母牛より先に死んでいた」と聞いて、実際におなかを開かれた仔牛を見て、後少しで産まれてこられたのに胎内から出ることかなわず誕生もしていない生命を手放さなければならなかった仔牛はどんな思いでいただろう、自分も病気で苦しい中、仔牛を失った母牛は何を思って死んでいったのだろうと思って、悲しい気持ちになりました。
 家畜は人の手がなくては生きられない命で、人の助けに対して対等・・・・・いや、それ以上の利益を返してくれます。「マダワスカ」は生前のものに変えて、死後も私たちの利になるものを遺してくれました。「マダワスカ」を悔やむ気持ちとともに、資料を大切にしていかなければ、と思いました。
P君の感想  今日の授業で映像を見ていて思ったことは、ものすごく大変なことだったんだなあと痛感したことが1番でした。「マダワスカ」が死んだ日の朝、学校でB君がとても元気がなかったので、僕はいつも通り、「おはよう」と声をかけると「「マダワスカ」が毛布を掛けられて死んでいた」と、とっても悲しそうに僕に言ってきました。僕は、最初、信じることができずにいました。しかし、先生からの報告もあって、それが現実だと知るともっと何かしてあげられたのじゃあないかという後悔がおそってきました。「マダワスカ」が倒れていたのを発見したのは僕ら3年生で、自分とB君はびしょびしょになりながら水を必死にかけました。でも、よく考えると、乳房を冷やしてしまったのは僕じゃないかと思い、もしかして、あれが悪かったのではないかと思うと、気持ちが沈んでいきます。それでも僕らは「マダワスカ」の死をしっかりまっすぐに受け止めて、次の30号のルドルフの子供を完璧な状態で産ませることを目標に2倍に愛情をかけて頑張ることを決意しました。「マダワスカ」とその赤ちゃんの仔牛の死を無駄にしないようにしたいです。