未来教育プロジェクト学習

『防災リテラシー』を未来教育プロジェクト学習で!


 ◆「生きる力を子ども達に」--4つのリスク教育

 ふだんは気づきませんが、私たちが生きる毎日には、さまざまな危険が起こり得ます。例えば、情報社会に不可欠な「携帯電話」によって起こる危うさ。生きるために口にする「食品」に潜むあやしい添加物。また生活を破たんしかねない「金銭」トラブル。避けようがない「災害」という危険など。・・・「情報」「食品」「金銭」「災害」この4つはいずれも21世紀を生きる日々に身近なリスクです。しかし、この中でももっとも「生命そのもの」に直結するのが「災害」です。
 昨今、「生きる力」という表現がよく使われますが、私たち大人たちが本気で「生きる力を子ども達に、」と願うなら、これらのリスク教育をしっかり行う必要があるでしょう。なかでも災害時にどう対応したらいのかという文字通り、「生きる力」=「生命を自分で何とかする知識とスキルそして、意志」に直結する「防災リテラシー」こそ必要とおもいます。では、実際にそれはどう進めたらいいのか、高知の小学校における実際の事例をもとにお知らせします。
 
 2002年、高知市立大津小学校では、防災教育を<未来教育プロジェクト学習>で行い大きな成果を得ました。子ども達が「防災に関する知識」や「スキル」をたくさん身につけたばかりでなく、意欲的に取り組み意志をもち「自分の頭で考え判断できる力、自己評価でさらに向上する術(すべ)」を身につけていったのです。

 高知市の大津小学校6年生における取組。大津の「津」の字が示すとおりに、地盤が低く、今も災害の心配とともにある学校です。昨年私が学校を訪問したときも、「見て、ここまで来たのよ」と安藤厚子校長先生が指さして見せてくださる、4年前のその水位の恐ろしい高さ。子ども達の心には4年前の恐ろしい大雨の記憶が残っている。いまでも大雨が降ったとき、子どものうち何人かは不安定になり雨の中を声をあげて走り回る子もいた。 「子どもの心を何とかしたい。子どもたちの身を守ってあげたい。」という気持ちが担当の岡先生はじめ先生方の胸に湧いた。「怖いなら、危険なら、なお災害に対座しよう!防災プロジェクトをしよう!」ということで、「総合的な学習の時間」に「防災教育」をプロジェクト学習でスタートした。

 岡敦子先生は、前任校である高知市立旭東小学校にて川崎ひろか先生(現在、高知市立鴨田小学校)とともに鈴木敏恵と一緒に未来教育プロジェクト学習を100日間以上一緒に行った経験をもっていたので、今回の防災プロジェクトもまよわず、ポートフォリオの活用とプロジェクト学習でいこう!なった。

 「防災教育」をプロジェクト学習で行う学校のために、プロジェクト学習のフェーズを追いながら、実践に必要な戦略的なアドバイスを盛り込みながら、大津小学校の防災教育の内容をフェーズごとにお伝えていきます。

 ◆未来教育プロジェクト学習イメージ図

<未来教育プロジェクト学習>その最大の特徴は、ビジョン、ミッション、ゴールが明確なことです。
つまり「何のために何をやり遂げたいのか!」を学習者自身が掴んでいるのです。高知市立大津小学校の防災教育のテーマとゴールは次のようなものです。

<テーマ> ビジョン(願い):「私たちの大津を災害に強い町にしたい!」
ミッション(意志):
「大津で生活するすべての人たちのために、災害に強い町にしたい!」
<ゴール>
(具体的な成果物)
「防災パンフレットを作製して、大津の人たちに役立てる」


「意志」と「考える力」

「何のために何をやり遂げたいのか」それは、どう進めるのか、ということを子どもが理解してからすすめることが大事。なぜなら「考える力」を身につけてほしいからだ。「考える」ためには、「意志」が必要。「意志」をもつには「知る」必要があるのだ。未来教育プロジェクト学習は、「何のために何をやり遂げたいのか」ここを必ず教師と子ども達が共有することを最大の特徴とする。

<未来教育プロジェクト学習>とは

<未来教育プロジェクト学習>とは意志ある学び。
<未来教育プロジェクト学習>とは、子ども達がもっている「やる気」や「イメージする力」「ロジカルな思考スキル」「問題解決力」など

21世紀を生きる力を最大限に引き出す、新しい学習手法です。「災害」はもちろん、どんな「学習題材」にも対応できる普遍的プラットホームです。そのスピリットである「意志ある学び」を叶えるために次のような特徴をもちます

(1)活動の「ねらい」と「価値」を子ども達が知っている

「何のために」この学習をするのか、この学習をすることでどんな力がつくのか?このプロジェクトは社会的にどのような「価値」があるのか? を子どもと共有します。先生は、すべてをスタートする前に子ども達に説明します。それにより子ども達は、意欲をもって取り組むことができるのです。

(2)「ビジョン」「ミッション」「ゴール」が明確なこと

プロジェクト学習のテーマは、「ビジョン」「ミッション」からなります。ビジョンとは「○○にしょう!」という、あるべき将来の姿です。ミッションとは、「○○のために」という使命感。そして、それを叶えるために具体的に何をするか、それが「ゴール(達成目標)」となります。
「何のために、何をやりとげたいのか」このテーマとゴールに対し、子ども自身も関わるなど、コンセンサスを重視します。それが意志をもち進めるために必要なのです。
プロジェクト学習のイメージ図
http://www.suzukitoshie.net/2001/mokuteki1.html

 調べ学習・体験学習・・を超え、未来教育プロジェクト学習で!

子ども達が「意欲」をもち続け、21世紀を生きる力を身につけるためには、1回の体験学習、あるいは、防災や災害についての調べ学習を行うだけでなく、<未来教育プロジェクト学習>で行うとより有効です。

3)プロジェクトの「基本フェーズ設計」で進める

まずプロジェクト学習について子どもに伝えます。ビジョンやミッションが込められたテーマを生みだし、チームを組み、戦略を立て、情報を集めゴールへ到達する、このプロジェクトのイメージを子ども達に最初に提示することで意志が宿るのです。

<未来教育プロジェクトの基本フェーズ設計>

準    備
テーマ・ゴール
計    画
情報リサーチ
制    作
プレゼンテーション
再 構 築
評    価

 

 ◆「ポートフォリオ」化


そしてその活動や成果のすべてをポートフォリオ化しておきます。「ポートフォリオとは、「紙ばさみ・書類鞄」の意味、つまりバラバラのものを一元化するもの。バラバラでは価値を持たないが、一元化しておくことで重要なことや自分の成長などを見出すことができます。
子ども達は、学習プロセスにおいてやった活動の様子や自己評価、集めた資料やパンフレットや成果を一冊のファイルに時系列に一元化していきます。ポートフォリオを俯瞰し客観的に現状を見ることができることで、これから何をすべきかも考えられるのです

ポートフォリオとは?
http://www.suzukitoshie.net/2001/P-1po-to.jpg

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